岡山大学/岡山大学病院麻酔科蘇生科におけるAcute Pain Serviceへの取り組み ~手術を受ける患者様への安全・安心・満足度向上を目指して~

岡山大学

岡山大学は10学部・1プログラム、8研究科、4研究所、附属病院、附属学校を有する総合大学型の国立大学法人です。
今回、最新の研究成果をわかりやすく紹介する「FOCUS ON」を2022年3月17日に発行しました。ぜびご覧ください!

<発表のポイント>
・岡山大学病院麻酔科蘇生科では、2015年より全国に先駆けてAcute Pain Service(APS)に取り組んできました。
・チームの主要なメンバーには麻酔科医、手術部看護師、臨床工学技士、手術部薬剤師の多職種からなる構成で、術後翌日の患者様に回診を毎日行っています。
・APSを開始したことにより、患者様の術後疼痛に関する満足度の向上や早期離床、術後合併症の軽減、病院滞在日数の減少に貢献しています。

◆発表者
 岡山大学病院 集中治療部 助教 松崎 孝

◆導 入
 私たち岡山大学病院麻酔科蘇生科では、手術室を中心に手術を受ける患者様への対応だけでなく、集中治療室や
ぺインセンターに関与し、地域連携からの紹介や院内における他科の患者様の相談をいただき、対応を行ってお
ります。手術後の痛みを適切に制御することは、術後の回復を考慮するうえで重要な役割を果たします。痛みが強
いと動くことができず、離床が遅れます。
 また、鎮痛薬を多く使用することで副作用が強くなり、寝たきりになってしまいます。その結果手術後の合併症が増加し、病院滞在日数が延長してしまいます。痛みが継続することで、気分的にも抑うつ状態となり慢性痛へと移行することも約10~30%の頻度で発生することも報告されています。手術後早期の痛みを適切に制御することは、慢性痛への移行を防ぐ点においても重要です。
 岡山大学病院においては、2015年より全国に先駆けて、Acute Pain Service(APS)を多職種によるチームで作り上げ、急性痛への取り組みを強化してきました。

◆背 景
 岡山大学病院では年間約1万件の手術が施行されています。従来術後回診は、手術麻酔を担当した麻酔科医が各自で施行していました。全国的にもその流れは共通ですが、多職種が加わり様々な角度から術後の患者様を評価できるシステムは存在していないのが現状です。
 Acute Pain Serviceは、日本語に訳すと「急性痛に対する医療のサービス」を意味します。従来マンパワーの問題もあり、術後痛まできちんと手が回っていない状況でしたが、多職種によるチームを作ることで、実現可能な取
り組みへと変革してきました。
 APSは欧米において、看護師を含むチームで手術を受ける患者様の痛みだけでなく、麻酔薬や鎮痛薬に関連した副作用に対応することで、患者満足度の向上や術後の早期回復につながる試みとして導入されてきました。しかしながら本邦における多職種で取り組むシステムの構築はいまだ確立されていないのが現状です。

◆実際の運用
 チームの主要なメンバーは写真にも示している通り、麻酔科医と手術部看護師だけなく、臨床工学技士、薬剤師の4人で構成されています。欧米にない特徴として薬剤師と臨床工学技士が加わっていることが挙げられます。
 対象患者は、患者管理鎮痛法(Patient controlled analgesia:PCA)の機器を使用した患者様に対して、術後翌日のある一定の時間(午前11時)にチームメンバーが集合し、平均10~15名を病棟へ往診して、術後1日目の主観的痛みの評価(Numerous rating scal:0~10点評価)や嘔気、嘔吐、眠気など副作用に関する情報、PCA機器の評価を多職種で施行しています。
 麻酔科医師もしくは看護師が問診を行い、薬剤師が記録を記載し、臨床工学技士が機器に関する情報を収集します。病棟に薬剤師が一人常駐しており、夜間の情報をチームに伝え、患者様に関する情報を共有します。本ラウンド運用後術後疼痛管理にかかわる、機器を含めた医療上の安全面向上が得られています。薬剤師が参加することで、術後回復室(集中治療室)から病棟での疼痛管理の詳細(追加使用の鎮痛剤処方や副作用に関する情報)が得られることで、チーム内全員に情報共有できスムーズな術後回診が施行できています。
 多職種で様々な角度から術後翌日の状態を評価することで、患者様の痛みに対する満足度だけでなく、主治医や病棟看護師へ有用な情報を提供することが可能になり、病院全体の質の向上に貢献ていると感じています。
 現在本ラウンドを行い7年経過していますが、APS導入がもたらせた功績を実感しています。機器を含めた医療上の安全面向上が得られているだけでなく、多職種(特に薬剤師と臨床工学技士)との連携強化が可能となり、互いの足りない部分を補い質の高い術後疼痛管理を実施しています

◆展 望
 今後術後痛ラウンドを発展させることで、手術を受ける患者様の痛みに対する満足度の向上のみならず、痛みや嘔気、気分不良がないことで術後の早期離床や早期回復が誘導され、病院滞在日数が短縮し、患者様にとり安全、安心の術後疼痛管理を提供していきます。
 世界に通用するAPSを目指し、未来永劫持続可能な APSへの取り組みを今後も継続していきます。

〇FOCUS ON:岡山大学病院麻酔科蘇生科におけるAcute Pain Serviceへの取り組み ~手術を受ける患者様への安全・安心・満足度向上を目指して~
https://www.okayama-u.ac.jp/up_load_files/press_r3/press20220317-2.pdf

◆参 考
・岡山大学病院
 https://www.okayama-u.ac.jp/user/hospital/
・岡山大学 集中治療部
 https://www.okayama-u.ac.jp/user/hospital/index168.html
・岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 麻酔・蘇生学講座
 http://www.okadaimasui.com/jp/department/clinical/icu.html
・岡山大学大学院医歯薬学総合研究科
 https://www.mdps.okayama-u.ac.jp/
・岡山大学医学部医学科
 https://oumed.okayama-u.ac.jp/med/

◆参考情報:FOCUS ON
・【岡山大学】全身性エリテマトーデスで免疫力が低下する原因分子を同定
 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000419.000072793.html
・【岡山大学】酵母が必要としている栄養素を酵母に語らせる技術を開発
 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000516.000072793.html
・【岡山大学】神経内分泌腫瘍治療への新しい挑戦 ~新しい放射線治療の導入~
 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000582.000072793.html

◆本件お問い合わせ先
 岡山大学病院 集中治療部 助教 松崎 孝
 〒700-8558 岡山県岡山市北区鹿田町2-5-1 岡山大学鹿田キャンパス
 TEL:086-235-7778
 FAX:086-235-6973
 http://www.okadaimasui.com/jp/department/clinical/icu.html

<岡山大学病院との連携等に関する件(製薬・医療機器企業関係者の方)>
 岡山大学病院 新医療研究開発センター
 〒700-8558 岡山県岡山市北区鹿田町2-5-1
 下記URLより該当する案件についてお問い合わせください
 http://shin-iryo.hospital.okayama-u.ac.jp/ph_company/

<岡山大学病院との連携等に関する件(医療関係者・研究者の方)>
 岡山大学病院 研究推進課 産学官連携推進担当
 〒700-8558 岡山県岡山市北区鹿田町2-5-1
 TEL:086-235-7983
 E-mail:ouh-csnw◎adm.okayama-u.ac.jp
     ※ ◎を@に置き換えて下さい
 http://shin-iryo.hospital.okayama-u.ac.jp/medical/

<岡山大学の産学官連携などに関するお問い合わせ先>
 岡山大学研究推進機構 産学官連携本部
 〒700-8530 岡山県岡山市北区津島中1-1-1 岡山大学津島キャンパス 本部棟1階
 TEL:086-251-8463
 E-mail:sangaku◎okayama-u.ac.jp
     ※ ◎を@に置き換えて下さい
 https://www.orsd.okayama-u.ac.jp/

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 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000603.000072793.html

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 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000070.000072793.html
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国立大学法人岡山大学は、国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」を支援しています。また、政府の第1回「ジャパンSDGsアワード」特別賞を受賞しています

リリース元:岡山大学
URL:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000615.000072793.html


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